「性描写が激しいので18才未満はダメよ」ということではなくて、働いた経験のない学生さんが、この登場人物たちに感情移入するのは難しいだろうなぁ、ということです。
このホモ本は、もう少し、オ・ト・ナになってから・・・・、ね
(笑)
今日のホモ
「普通の男(ひと)」 榎田尤利 成美堂出版・クリスタル文庫
ある夜、コンビニでラストのおにぎりを譲ってくれた親切な会社員、それが偶然にも再就職先の出版社で営業をしている的場だった。
自分たちを「普通」と信じて疑わないサラリーマンの花島と的場が、何度も心の変化を否定しながらも恋に落ち、戸惑いながら発展する。
どこにでもいそうな、電車で隣に立っていそうな、そんな普通の会社員たちの物語です。
的場は38歳の営業マンだし、花島は前の会社が倒産して転職してきた32歳の編集職。
ボーイズラブ界のカップル平均年齢からすると、かなりの御高齢カップルです(笑)
そして、BL界で勢力をふるっている、一流企業のエリートやエグゼクティブとは大違いの、中堅企業のサラリーマンです。
すごーく地味です。これほど華のない地味な設定は異色に思えるほど。
しかし、こんな小説の方が、私は安心して読むことができます。
薄っぺらい内容のキラキラ・ヤンエグ話を読んだ時に、特に思うのですが、たとえBLとはいえ、取材しないで創作した話はダメだと思います。
「将来を期待される有能なエリート」と文中で紹介されても、あまりにも稚拙な仕事の描写をされると、そこで夢から覚めてしまいます。
小説はあくまでも作り物だけど、読者に夢を見せるなら、もっと上手に見せてよ・・・・・と思うのです(今日は辛口やな〜)
作家本人が会社員の経験がなくても、実際に企業に勤める人間に話を聞いてみたり、チェックしてもらったら、自分がどんな変なことを書いてきたか気づくはず。
小説を書くなら、簡単な取材くらいしてくれ〜。
それにひきかえ、榎田さんの作品の登場人物は、本当に働いている雰囲気が伝わってきます。企業というものを肌で感じたことのある人なんだろうなと思います。
バケの皮がボロボロはがれてくるエリート話よりも、きちんと書き込まれている普通の会社員の話の方に、私は好感を持ちます。
この作品の中で主人公が、「あんなにも容易く自分の未来を夢見られたのは、なぜだろう。そしていつから、夢を抱きしめた腕の力を抜くようになったのか」と思うシーンがあるのですが、なんかこう、ぐっとくるものがありました。
私は10代では、この心境はわからなかった・・・・。
自分は特別だけど、特別じゃないことに気づいた大人が読むと、心に染みる作品だと思います。