そんな時代もあったねと。
今日のホモ
「恋をしている君たちへ」 麻生雪奈(絵・木下けい子) オークラ出版 アクア文庫
中学生の時、北の国から転校してきた、カナの無口な親友・侑斗。
高校生になったカナは侑斗に対し、「トモダチ」以上の感情を抱くのだが、今の二人の関係を壊したくなくて、自分の気持ちを隠していた。
ところがある日、カナが中学生の頃につきあっていた彼女・千鳥の存在を侑斗が知ったことから、次第にカナと侑斗のバランスが崩れ始めてしまう。
倒産した桜桃書房から出版されていた麻生雪奈さんの作品が、アクア文庫やラピス文庫から続々と復刊されています。
新書サイズの旧作を持っているので、復刊された文庫版はどれも買っていなかったのですが、今回の作品は麻生さんの作品の中で一番好きだったので文庫版も買ってみました。
静かな深夜に、ゆっくり噛みしめるように読み返してみましたが、やっぱりこの作品、今でも好きです。
丁寧に推敲されただろう文章に、詩的な表現が織り込まれていて、言葉にこだわりながら作り上げられているように感じます。
坂口安吾の「恋愛論」からの引用など、青くさいなーと思う部分も無きにしもあらずですが、青春小説ですしね。それもまた良しでしょう。
ただ、以前の新書版で一番好きだった文章が改訂されていて、仕方がないこととはいえ少し残念でした。
保護者の転勤によって侑斗(攻め)が北海道に戻るかもしれないと知らされ、不安と焦りと離れたくない感情のままに、二人が家出して夜明け前の海岸を歩くシーンがあるのですが、そのシーンの描写がとても好きだったんですよー。
朝日が昇る前のまだ暗く、波の音だけが聞こえる中、空の隅から少しずつ夜が明けてきて、変化していく空の色を眺めている二人の耳に
ピピという電子音が突然鳴り響いて、カナと侑斗は同時にビクリと肩を揺らした。
そして、ふたりはゆっくりと見つめ合う。確かに明けてきた夜の中、世界が始まる合図のベル。
という文章が、ものごっつ気に入っていたのですが、
そう・・・・・、ピピと鳴ったのはベル。ポケットベルなんです。
当時はポケベルの時代だったわけですよ。第1話が書かれたのは10年前ですから。
もう現在ではポケベルなんて使ってるヤツはいねーということで、文庫版は携帯電話に変えられていました。それがコチラ。
静寂に突然明るいメロディーが鳴り響いて、カナと侑斗は同時にビクリと肩を揺らした。
そして、ふたりはゆっくりと見つめ合う。確かに明けてきた夜の中、世界が始まる合図の音。
うわーん、ものすごく些細なことなんですけどね。
「世界が始まる合図のベル」の方が美しかったな〜。
・・・・・作中たった2行の文章に執着しすぎっすね。思い入れ強くてコワーイ(笑)
さて、わけわかんないタイトルの数字は、ポケベル読みで「14106=愛してる」でした。
じゅうねんひとむかし。
※ 旧作(新書版)に出てくるポケベルはカタカナでやりとりするタイプのものです。