この世の中で、たった一人だけが大切で。
もう二度と離れたくない。この人さえいてくれれば、他には何もいらない。
そんな、狂おしいほどに、お互いを求めてやまない二人の物語でした。
双方が壊れてしまいそうなくらい思いつめているので、読んでいる内に息苦しくなってきて、心臓がいつもと違う鼓動を刻むかんじ。 切なさレベルは「救心」をくれ級でした。
今日のホモ
「落花の雪に踏み迷う」 久我有加(絵・門地かおり) 新書館 ディアプラス文庫
母は街一番の美貌を謳われた芸妓。その母に生き写しの廉は、客として花街にやってきた学生・達臣と出会い、急速にひかれあう。
ふたりは街を出て共に暮らそうと誓いあうが、約束の日、達臣は現れなかった。
桜の花弁舞う中、廉はいつまでも待ち続けた ―― 。
その日から二年。達臣を忘れ、街で生きることを決めた廉は、娘を買いに訪れた寒村で、鉱山社長となった達臣と再会する・・・・。
ベタ褒め、始めます。
まずタイトルが美しい〜。
「太平記」の有名な一節から取られたものですが、この物語の核となっている情景が思い浮かぶ、素敵なタイトルだと思いました。
対になっている第二話のタイトル「胡蝶の夢に浮き泊る」も綺麗。
次に、登場人物が好きです。特に受け。
久我さんの書く受けは、芯が強くて背筋が伸びた人が多いのですが、今回一番強く、そう感じました。
寂しそうなのに強くて綺麗な廉に、気持ちを持っていかれました。
ちょっと必要以上に強すぎ・・・・かもしれませんが。
体つきはほっそりとして華奢な様子ですが、花街の自衛集団の一員として鍛えられてきたので、かなり強いです。 (殺傷シーンがあるので苦手な方は避けて下さい)
攻めも良かったです。受けのことを愛しすぎてヘタレ。これまた久我攻めの王道ですね。
愛に生きたために、人として大切な部分が欠落してしまった可哀想な男。
ももも・・・・萌えですわ!(笑)
私は狂おしくも切なく、お互いを焦がれるほどに求めあう話が大好きなので、この作品はツボど真ん中でした。
身近な言葉で書かれているのでイメージが膨らみやすく、個人的には関西弁が良い方向に作用しましたが、裏を返せば、関西圏以外の方には馴染みにくいかもしれません。
言葉のニュアンスが伝わらないと作品の持ち味は半減するでしょうし、そのあたりは諸刃の剣ですね。
好き嫌いがハッキリと分かれる作風だとは思いますが、センチメンタルの波にさらわれ、センチメンタルの海で溺れたい方は是非